





解説
明らかになる
“もう一つのハリウッド映画史”
映画草創期から脈々と生き続けてきた
衝撃のメッセージ

同性愛はハリウッド映画でどのように描かれてきたのか?もしくは描かれてこなかったのか?どのような創意工夫が凝らされ、いかにして独自の映画表現をつかみ取ってきたのか?『セルロイド・クローゼット』は、120本もの作品をひも解きながら、トム・ハンクス、シャーリー・マクレーン等ハリウッドを代表する俳優、監督、プロデューサーらへのインタビューを通し、映画史を裏面から読み解き、“もう一つのハリウッド映画史”を明らかにする革新的な作品である。監督は『ハーヴェイ・ミルク』(1984年/第57回アカデミー賞長編記録映画賞受賞)のロブ・エプスタインとジェフリー・フリードマン。原作はゲイの活動家として多大な影響を与えたヴィト・ルッソ(「the Celluloid Closet」)。今回新たに製作されたデジタル・リマスター版での公開となる。
名作の奥深くに
注意深く織り込まれた〈秘密〉──
エジソン製作の映画草創期のフィルムに、
ダンスをするゲイの男性が

『ベン・ハー』に仕掛けられた驚くべきストーリー展開。スタンリー・キューブリックの『スパルタカス』で、公開時にカットされたシーンに込められた意味とは?ジェイムズ・ディーン主演『理由なき反抗』でサル・ミネオはなぜ撃ち殺されるのか?『モロッコ』のマレーネ・ディートリッヒやグレタ・ガルボなど映画ファンを魅了した魅力の裏には……。映画草創期から1994年までの作品を丹念に検証し、場面の中から次々と隠し絵のようにある〈秘密〉が浮かび上がる。


証言者
プロフィール








スタッフ
原作 Vito Russo ヴィト・ルッソ
1946年7月11日~1990年11月7日 アメリカ合衆国ニューヨークシティ出身のLGBT活動家、映画史家、作家。「The Celluloid Closet」(1981年、1987年改訂版)の著者。1970年代初頭に本書の執筆に着手したヴィトは、まずゲイ・イメージや、ゲイへのステレオタイプを含む膨大な映画を参照することから始めた。もともと本書は映像クリップを用いた講義のために執筆されたものだが、のちに同性愛とポップカルチャーに関する非常に有益な書籍の一つとなり、ニューヨーク・タイムズ紙は「アメリカ映画産業における同性愛に関する必須の参考書」と評した。
1985年にHIVと診断されたルッソは、HIV/エイズ・アクティビスト・グループ「ACT UP」(AIDS Coalition to Unleash Power)と共に頻繁に抗議活動を行った。1980年代、米国でHIV/エイズが社会問題として認識されるようになり、エイズの脅威と差別が広まるようになると、メディアの不十分かつ不正確な報道に憤慨したルッソは、メディアにおけるLGBTの包摂を主張するメディア監視団体、ゲイ・レズビアン名誉毀損反対同盟「GLAAD」の共同設立者となる。
1989年、アカデミー賞最優秀記録映画賞を受賞したドキュメンタリー映画“Common Threads: Stories from the Quilt”(ロブ・エプスタイン&ジェフリー・フリードマン監督)に出演。同作はルッソのパートナー、ジェフリー・セヴシックの生と死、ルッソが彼のために作ったキルトを描いている。1990年、エイズ関連の合併症で逝去。2011年ドキュメンタリー映画『Vito』が製作され、ニューヨーク映画祭でプレミア上映された。
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監督 Rob Epstein ロブ・エプスタイン
過去にアカデミー賞2回、エミー賞を4回受賞しているアメリカ映画界屈指のドキュメンタリー作家。1955年ニュージャージー州ニュー・ブルンズウィック生まれ。85年にアカデミー賞最優秀長編記録映画賞を受賞した『ハーヴェイ・ミルク』は、ゲイであることをカミング・アウトして選出された全米初の市政執行委員ハーヴェイ・ミルクが、就任11ヵ月後の1978年11月、当時のサンフランシスコ市長ジョージ・マスコニーニとともに暗殺された著名な事件を追う迫真の1編だった。ゲイ・セクシュアリティの問題を通してアメリカ社会の断層を描くその手法は、5作目となる『セルロイド・クローゼット』にも継承されている。1990年、2度目のオスカーの栄冠を得た“Common Threads:Stories From The Quilt”では、6人のエイズ患者の生と死を見つめ、自身のテーマをさらに掘り下げた。同作品はナレーターにダスティン・ホフマンを起用し、エミー賞も受賞。6人の患者の中には、本作の原作者ヴィト・ルッソも含まれている。87年、私生活でのパートナーでもあるジェフリー・フリードマンとともに、サンフランシスコにテリング・ピクチャーズ社を設立。映画、ビデオ、テレビ番組の製作を行なっている。
- 主な監督作
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1984年
『ハーヴェイ・ミルク』
1985年アカデミー賞最優秀記録映画賞他多数・日本公開1988年
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1989年
“Common Threads: Stories from the Quilt”
アカデミー賞最優秀記録映画賞
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1995年
『セルロイド・クローゼット』
エミー賞監督賞受賞/全米公開1996年・日本公開1997年
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1999年
『ナチ刑法175条』
ベルリン国際映画祭最優秀記録映画賞+審査員特別賞他多数
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2002年
”Underground Zero”
サンフランシスコ映画批評家協会賞
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2018年
”End Game”
2019年アカデミー賞候補
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2019年
『リンダ・ロンシュタット サウンド・オブ・マイ・ヴォイス』
2021年グラミー賞最優秀音楽映画賞他多数
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監督 Jeffrey Friedman ジェフリー・フリードマン
1951年ロサンゼルス生まれ。マーティン・スコセッシの『レイジング・ブル』(80年)で編集アシスタン トを務めた他、編集者として多くの映画に関わる。83年の『ネバー・クライ・ウルフ』で初クレジットされ、その後、主にテレビ・ドキュメンタリーの編集に従事。 “Common Threads: Stories From The Quilt”では共同監督に名を連ねる。2018年、フリードマンとエプスタインは、サンフランシスコ映画協会より映画界への功績を称えられ、ジョージ・ガンド3世・クラフト・オブ・シネマ賞を受賞。
海外評 & コメント
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エレガント。知的で魅力的。
映画の中のゲイを描いた至高のドキュメンタリー。
本作を見たが最後、『ベン・ハー』も、『赤い河』も、『スパルタカス』も、以前と同じようには見られない。サンフランシスコ・クロニクル
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簡潔かつ挑発的。
ワシントン・ポスト
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綿密な演出と厳選された映像。
刺激に満ちウィットに富んだインタビュー。
固定観念を打ち破る新たな表現や声と共にスクリーンの認識をあぶり出す傑作。Variety
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時代とともに怪物化され、戯画化され、そして普遍化されてきた私たちの虚像の歴史がこのクローゼットに記録されている。日本公開から三十年近く。私たち自身のすがたをスクリーンの中に取り戻す日まで、まだ戦いは続いている。
東海林毅 (映画監督)
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映画における同性愛表象の歴史は、社会の中で同性愛がどのように受け止められていたかの反映だ。同性愛は嘲笑され、検閲され、悲劇としてばかり描かれてきた。けれども、だからこそ解釈は抵抗になる。それは、どれほどかき消されてもなお自らの似姿を読み取り生き延びてきたクィアな人々の軌跡に他ならない。
水上文 (文筆家)
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今観たら古い箇所があるかもしれない。私たちはここに記された時代よりも先に進んできたから。今観たら楽観的に思えるかもしれない。30年が過ぎ、将来の不透明さが増してきたから。時代を経て観ると改めて自分たちの過去と未来を考えさせられる。長らく再上映が叶わなかったこの作品は、つまり、名作だ。
サムソン高橋 (ゲイライター)
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びっくり!あの映画のあのシーンにこんな意味があったなんて!目から鱗です。LGBTQが今みたいに話題になる前に、先人はアイデアと暗喩で、意味深なシーンを撮っていたんですね。そんな映画人に敬意を表したくなる『セルロイド・クローゼット デジタル・リマスター版』。ピックアップされている映画を、もう一度観たくなりました。どんな時代にもLGBTQは存在していたのです。ANYTIME, WE ARE EVERYWHERE !
三ツ矢雄二 (声優・マルチクリエーター)
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全てはここから始まった、というほど強烈なインパクトを誇り、同性愛の表象について絶大なる知見を与えてくれた歴史的作品だ。単なる啓蒙作品に留まらず、過去作のフッテージを繋いだ本編自体が、全体で1本の感動的作品に仕上がっている編集が圧巻。
矢田部吉彦 (前東京国際映画祭ディレクター)
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社会が規定するレズビアンとゲイという同性愛のイメージの偏りや差別意識を明らかにする、色褪せない傑作。一方で、アメリカ映画産業の、白人でシスジェンダーである人々が中心である様子が、画面を通して浮かび上がる。
男女二元論にもとづく規範のまなざしが、いかに人種主義や植民地主義と絡み、視覚的なプロパガンダと作用してきたか? 時代の限界か、本作ではこれらの課題はほとんど語られないのに、逆説的に立ち上がってくるのも興味深い。その限界こそ、後続に問いを残した証でもある。ひとりでも多くの人に観てほしい。
鈴木みのり (作家)
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同性愛をめぐる表現の歴史。ときに隠喩や仄かしでくぐり抜け、ときに正面から切り込み時代を変えてきた。それは、今も昔も、同性を愛する者の日々の抵抗実践でもある。苛烈な時代も多様な抵抗で私たちは生き延び歴史を紡げる、そう思わせてくれる映画だ。
砂川秀樹 (文化人類学者)
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取りこぼされる名前のなかった/ない性を生きる人のことも思いながら、それでもなお、映画表現の意義や力が、ゆるやかに繋がるイメージや声を通してふつふつとした熱をもって伝わってくる。いつかわかった気になって鼻で笑ったシーンに今、胸が張り裂けそうになる。
秋田祥 (映画上映企画)
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今でこそ種々のクイア映画で解説など依頼されもしますが、その手法のすべては実はこの『セルロイド・クローゼット』から教わりました。ヴィト・ルッソの原著翻訳プロジェクト(途中頓挫)にも参加しました。この作品は世界の見え方を変えます。そんな世界の秘密を、30年経った日本の今だからこそ、あなたにも観てほしい。昨日のあなたには、もう戻れないはずです。
北丸雄二 (ジャーナリスト・作家)
上映情報
地域 | 劇場名 | 公開日 | 備考 |
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東京都 | ユーロスペース | 2025/6/14(土)〜 |
公開記念トークイベント決定! |
埼玉県 | OttO | 【近日公開】 | |
神奈川県 | 横浜シネマリン | 【近日公開】 | |
栃木県 | 小山シネマロブレ | 2025/7/18(金)〜7/31(木) | 一日一回上映予定 |
静岡県 | 静岡シネ・ギャラリー | 2025/7/11(金)〜7/24(木) | |
愛知県 | ナゴヤキネマ・ノイ | 【近日公開】 | |
京都府 | アップリンク京都 | 2025/7/25(金)〜7/31(木) | |
大阪府 | 扇町キネマ | 【近日公開】 | |
沖縄県 | 桜坂劇場 | 【近日公開】 |
1939年9月1日米国生まれ。個性的な表情と、コメディ・リリーフとしての豊かな才能で人気を博す俳優。カムアウトしたレズビアンでもある。資金集めに尽力し、ナレーションを買って出るなど『セルロイド・クローゼット』の成功を支えたひとり。代表作に、『ナッシュビル』(1975年)『9 時から5時まで』(80年)『ビッグビジネス』(88年)『ショートカッツ』(93年)など。自身に関するドキュメンタリー『Lily Tomlin』もある。