同性の友、求む ─ この国に同士はいない 恋人は、いる

金馬奨4冠‼主演男優賞・撮影賞・編集賞・観客賞

ベ・ラ・ミ 気になるあなた

黒竜江省のジャームッシュ ゲン・ジュン監督作品

原題:漂亮朋友

監督・脚本:ゲン・ジュン
出演:シュー・ガン、ジャン・ジーヨン、チェン・シュエンユ、ワン・チン、シュエ・バオホー
2024年/フランス、ポルトガル/中国語、英語/116分 原題:漂亮朋友
協力:大阪アジアン映画祭(映画祭上映時邦題『イケメン友だち』)
日本版字幕:藤原由希 宣伝デザイン:日用 配給:パンドラ

11月15日(土)〜渋谷ユーロスペースにて公開

滑稽だな、どうしても君に会いたいなんて

解説

冷めたスープとダイニングレストラン、
ぎこちない会話、
場末のサウナのタバコの煙

国とは、自由とは、政治とは、性とは、
そして愛とは

凍てついた田舎町のダイニングレストラン。そこに佇む男たち。ぎこちない会話と目くばせ……常連のある男は冷めた夫婦生活に飽きていた──。同じ頃、街をぶらつく大餅ダービン売りは若い男と別れたばかり。ある日、カフェを装ったハッテン場で巡り会ったふたりは、街をぶらつき、サウナに籠り、求め合い、真実の愛に近づいていく──。
ブラックなジョークとユーモア、胸に秘めた高まる気持ち。すれ違う中年の男たちが紡ぐ、シュールで温かな孤独と愛。モーパッサンの古典的名作「ベラミ」(※「美しき友」の意)を下敷きに、黒竜江省のジャームッシュ、ゲン・ジュンが、凍てついた風景に孤独な魂たちを投げ込み、そこに存在してはならないはずの愛の形をオフビートなリズムで刻む。モノクロームの削ぎ落された映像が、人間の孤独と愛を、美しく、ハードボイルドに浮かび上がらせる。

かの国では上映不可能な“タブー”に軽やかに挑んだ、オフビートで異色のラブ・ストーリー

20年にわたり黒竜江省で作品作りを続けるゲン・ジュン監督が、1990年代に地元鶴岡で出会ったゲイ男性の悲劇的な経験をもとに、オフビートなユーモアを交え昇華させたラブ・ストーリー。“人間同士の温かな抱擁”をテーマに、監督と旧知の俳優陣が実名で登場し、中年の男たちのほろ苦くも温かい人間模様を描き出す。同性愛や体外受精、偽装結婚などのテーマを盛り込んだ本作は、中国当局を経ず台湾金馬賞に出品され、主演男優賞、撮影賞、編集賞、観客賞の4冠に輝いた注目作である。

物語

中国黒竜江省の雪深い町。シュー・ガンは、大餅ダービンを作りバイクで配達する日々を送っている。客から「小さい」「髪が入っていた」と言われても無言で寒風の中走り続ける。恋人で理髪師の若い男シャンチュエンに別れを告げられても執着を捨てられず、彼の店へと赴く。ある日、三度目の別れを告げられたシュー・ガンは、店の石鹸の匂いを嗅ぎながら干してあるブリーフを手に、虚ろにシャンチュエンの店を後にした。

同じ町で古道具屋を営むジャン・ジーヨンは、妻との関係が冷え切っている。食堂で向かいの席の男に「同志だろ。仲間に入れてくれ」と声をかけるが拒まれ、向かいの席で情熱的にキスを交わす女性カップル、アブとリウ・インを目撃する。公衆トイレでは「同性の友人募集」の貼り紙を撮影中、個室の男に買春を持ちかけられ、股間を触ってきたので激しく拒絶。帰宅すれば妻から「この町も家族もあんたもクソ」と罵倒される。一方、アブとリウ・インはシャンチュエンとその恋人シアオ・ホータオを巻き込み、人工授精で子を持とうと計画である

同性の「同志」を求め、街をぶらつく中年の男たち。愛を貫き未来を選ぼうとする女たち。雪の街で、高まる気持ちを胸に秘め、すれ違う彼らの人間模様が展開する──。

キャスト

監督

ゲン・ジュン 耿軍 Jun Geng

中国・黒竜江省鶴崗市生まれ。映画学校は出ていない。20年来黒竜江省での作品作りを続ける。“Hawthorn”(短編/2002年)、“Diary in Bulk”(短編/2003年)、“Barbecue”(2004年)、“Airplane”(短編/2012年)など数多くの映画を監督。2009年の“Youth”はローマ映画祭に出品された。短編“The Hammer and Sickle Are Sleeping”(2013年)で金馬奨最優秀短編映画賞を受賞した。“Free and Easy”(2016年)でさらに注目を浴び、サンダンス映画祭でワールド・シネマ・ドラマティック部門特別審査員賞を受賞し、金馬奨最優秀作品賞と最優秀監督賞を含む4つの主要部門にノミネートされた。“Manchurian Tiger”(2021年)は、第24回上海国際映画祭で最優秀長編映画賞であるゴールデン・ゴブレット賞を受賞した。

監督のことば

2020年2月。中国黒竜江省鶴崗ヘガンで、コロナ禍の真っただなか私は自宅に籠っていました。
夜9時以降しか外出できず、そのわずかな時間に新鮮な空気を吸い、散歩をすることが許されました。通りは空っぽで、しばらく歩いた後、前方からひとりの人が近づいてきました。彼が数十メートル先まで近づいた時、私はマスクの鼻に当たるアルミ板を指で押さえ、息を止め、できる限り大きな弧を描いてすれ違いました。相手は中年の男性で、彼も歩調を速めほとんど駆けるようにして私の横を通り過ぎました。私は必死に息を止めました……。さらに歩き続けると、また別の人に出会いました。またも私はマスクを押さえ、息を止め、できる限り大きな弧を描いてすれ違いました……。

あらゆる人の心を恐怖が支配していました。恐怖は人を弱くし、疑念や悪意を生み出し、社会を分断します。2020年4月、本作の脚本を書きたいという思いが湧いてきました。それは感情と内なる衝動から生まれたものでした。愛の物語を書きたいと思ったのです。

愛は恐怖を乗り越えます。愛は人々に互いへの尊敬を生み、寄り添わせ、抱きしめさせます。私は、人と人との距離が縮まるような物語、互いに大して敬意を抱く物語、温かな抱擁の物語を書きたいと思いました。それが本作の始まりです。

ロマンス。
コメディ。
ロマンティック・コメディ。

シュー・ガン(徐剛)、ジャン・ジーヨン(張志勇)、ユエン・リーグオ(袁立国)、シュエ・バオホー(薛宝和)、ジャン・シュン(張勲)――中年俳優たちが、新しい美学を提示します。

コメント & 海外評

※順不同

  • 別離におびえながらも、
    裸形の愛の星たちが自由を求め、
    身をぶつけあって輝いている
    ベ・ラ・ミ! 中国東北部の街を魅惑の場所に変えるゲン・ジュンの魔法。

    小野正嗣(作家、フランス文学者)

  • 『ベ・ラ・ミ』(美しき友)というタイトルに反して美男美女は出てきません。黒竜江省の寒そうな田舎町を舞台に、そこらへんにいそうなカッコよくない人々が恋をし、それにまつわる問題に向き合うのですが、そこにこそ人間らしい魅力がある…という映画です。

    北村紗衣(英文学者)

  • 同性愛者が心を許せる友と出会うことが容易でなかった時代。日本ではゲイ雑誌文化が花開き「薔薇族」や「さぶ」など様々なタイプが咲き乱れました。この『ベ・ラ・ミ 気になるあなた』はゲイ雑誌に例えるならば「サムソン」系。登場人物たちのままならない生き方と姿態を愛して欲しい。

    東海林毅(映画監督)

  • 凍てつく中国最北部を舞台にしたこの作品にモーパッサンの同名小説のような「美貌の友人」は登場しない。不器用で不細工な男たちの、煙草を燻らすことでしか場を保てないような機能不全の求め合い。それでも「絶望するな」の終盤に現れる謎の円盤と不思議な笑いのカタルシスを、私は今もしみじみ味わっている。

    北丸雄二(ジャーナリスト・作家)

  • 私たちはどんな考えから逸脱すれば真の自由になるのだろう。

    ときどき切なくて
    ぶった斬られたり
    クスッと笑ったり
    もんのすごいシュールな映画ですが
    リアルで愛しい!!!

    一青窈(歌手)

  • ゲイ、レズビアンの問題を大胆に描いたことだけでこの映画を讃えたいとは思わない。ジム・ジャームッシュばりのセンスのよさで片付けたくもない。讃えるべきことは他にあるはずなんだけど、それが何だかわからない。でもやっぱり讃えたいのです。

    柴田元幸(翻訳家)

  • 寒いモノクロの世界の中に閉じ込められているような気がして、思わず息を殺しながら観てしまった。ぎこちない人と人との関わりがとても美しくて。
    終わったあとの爽やかな寂しさは何故だろう。

    イシヅカユウ(モデル・俳優)

  • 密やかに花開こうとしていた中国のゲイシーンは、コロナ禍以降、再び地下に潜ることになってしまったという。ジャームッシュを気取った美しい画面の下で、この映画は現在の中国の田舎で生きる隠れゲイの実態を如実に描いている。そしてこの風変わりな作品が一番に訴えるのは、人が人を愛するという単純で普遍の行為なのだ。

    サムソン高橋(ゲイライター)

  • 誰もが自分勝手でしょうもなく、孤独で侘しくパッとせず、時に楽しく生きている。恋をした人間の陥るみっともなさや気持ち悪さまであたたかい視線で包むモノクロの質感に、「同志」として見透かされて恥ずかしいような、切ないような気持ちになった。

    王谷晶(小説家)

  • 極寒の中国北東部、同性との関係を求める中年の既婚男性たちと、精子提供で子どもを作ろうとするレズビアンのカップル。何重にも周縁化された人々が、監視したりぎこちなく求め合ったり試行錯誤する姿を通して、抑圧的な社会とその害をユーモラスに描き出している。

    鈴木 みのり(作家)

  • 中国発のクィア映画。母国で上映されることはないだろう。野心的で大胆で素晴らしく不条理なユーモアが通底に流れている。

    Asian Movie Pulse. com

  • 自由への渇望。
    人とのつながりへの切実な憧れ。
    余すところなく人の感情を映し出す。

    Singapore Film Society

  • つながりと愛を求める人間の姿は、根深い権威主義への抵抗でもある。

    Haykey Scanlon

  • ぽっこりとしたお腹、たるんだ肌の「全盛期を過ぎた男たち」に宿る美を、削ぎ落とされた色彩が鮮やかに描き出す。新たな美学を切り拓く一作。

    easternkicks.com

ユーロスペース限定!
『ベ・ラ・ミ 気になるあなた』
(漂亮朋友)
オリジナルグッズ

Tシャツ「タイタニック」(白/黒)size: M/L 5,000円
Tシャツ「Oh, Such a man」(白)size: M/L 5,000円
ベースボールキャップ「ベルバッジ」
(赤/ピンク/ネイビーブルー)size: Free
4,500円
ベースボールキャップ「God of Pure Love」
(ミントグリーン/白/ネイビーブルー)size: Free
4,500円
ステッカーセット「Quotes/Characters」 1,000円
アナログ・レコード 6,000円
ハンドメイド・ペンダント
(ジャン・ジーヨン/シュー・ガン/シュエ・バオホー)
3,000円
アーティストコラボカード(サイン入り) 1,500円
オリジナルポスター
(シュー・ガンとジャン・ジーヨン/サウナ)
1,000円

※税込 ※いずれも限定数

上映情報

地域 劇場名 公開日 備考
東京都 ユーロスペース 2025/11/15(土)〜

11/22(土)~28(金)の上映開始時刻
11/22(土) 14::20 / 18::25
11/23(日) 11:00 / 15::50
11/24(月・祝) 10:00 / 15:20
11/25(火)~28(金) 12:55 / 17:40
全回スクリーン①(約90席)での上映です。

11/24(月・祝) 10:00の回上映終了後、対談を予定
予告編なし・本編終了の11時:56分頃、対談開始予定
対談は12:00~12:3(約30分)の予定
登壇者:潟見陽さん(グラフィックデザイナー/loneliness books)、秋田祥さん(映画上映企画)

千葉県 キネマ旬報シアター 2026/1/17(土)〜1/30(金)
北海道 シアターキノ 2026/2/6(金)

※1日のみの上映

宮城県 フォーラム仙台 【近日公開】
栃木県 小山シネマロブレ 2025/12/26(金)〜1/8(木)
長野県 上田映劇 【近日公開】
愛知県 ナゴヤキネマ・ノイ 【近日公開】
京都府 アップリンク京都 2025/11/28(金)〜12/4(木)
大阪府 第七藝術劇場 2026/1/17(土)〜1/23(金)
兵庫県 元町映画館 【近日公開】
沖縄県 桜坂劇場 【近日公開】

大餅売り徐剛シュー・ガン

徐剛
シュー・ガン Gang Xu

1976年3月29日、中国・黒竜江省生まれ。“Free and Easy”(2016年/ゲン・ジュン監督)や“Manchurian Tiger”(2021年/ゲン・ジュン監督)に出演。ヒューストン映画祭で銀賞を受賞した“Silver Lining”(2024年/ドゥ・ビン監督)にも出演している。

張志勇ジャン・ジーヨン

張志勇
ジャン・ジーヨン ZHANG Zhiyong

1978年9月20日、中国・黒竜江省生まれ。ゲン・ジュン監督とは同じ村で育った幼なじみ。10歳の時、ゲン・ジュンら友人と共に鉱山で遊んでいる際、発見した起爆装置を好奇心から開けようとし、目と指を負傷。障害が残った。様々な職種を経験する一方、地域の障害者連盟に参加。22歳で“Diary in Bulk”(短編/2003年/ゲン・ジュン監督)に出演し俳優としてのキャリアをスタート。金馬奨最優秀短編映画賞を受賞した“The Hammer and Sickle Are Sleeping”(短編/2013年/ゲン・ジュン監督)では障害者連盟での経験を活かし障害者の役を演じ、より広く知られるようになった。『ベ・ラ・ミ 気になるあなた』で金馬奨主演男優賞を受賞。中国本土が2019年に金馬奨を禁止して以降、同賞を受賞した初の中国本土俳優となる。

食堂の店主 薛寶鶴シュエ・バオホー

薛寶鶴
シュエ・バオホー XUE Baohe

1981年、中国・黒竜江省生まれ。ゲン・ジュン監督作“Free and Easy”(2016年)や“Manchurian Tiger”(2021年)でも主演をつとめる。カンヌ国際映画祭短編パルムドールを受賞した“All the Crows in the World”(短編/2021年/タン・イー監督)やカルロヴィヴァリ国際映画祭Proxima部門グランプリを受賞した“Stranger”(2024年/ヤン・ジェンファン監督)などにも出演。

理髪師 李尚泉リー・シャンチュエン

王梓行
ワン・ズーシン Wang Zixing

1996年1月27日、中国・黒竜江省生まれ。四川省メディア学院を卒業後、2016年から2019年まで孟静輝(メン・ジンフイ)の演劇スタジオで活動し、数々の演劇作品に出演した。上海国際映画祭に出品された“Love, My Way”(2023年/ビン・リウ監督)に出演している。

阿武アブ

陳宣宇
チェン・シュエンユ Xuanyu Chen

中国の映画・テレビ女優。カンヌ国際映画祭短編パルムドールを受賞した“All the Crows in the World”(短編/2021年/タン・イー監督)に出演、代表作はカンヌ国際映画祭批評家週間で上映されフレンチ・タッチ賞を受賞した『ブルー・サン・パレス』(2024年/コンスタンス・ツァン監督)やロッテルダム国際映画祭に出品され大阪アジアン映画祭コンペティション部門でも上映された『ワン・ガール・インフィニット』(2025年/リリー・フー監督)など。

劉英リウ・イン

王傾
ワン・チン WANG Qing

1991年7月21日、河南省生まれ。中国の映画・テレビ女優。代表作に『陰陽師:とこしえの夢』(2020年/グオ・ジンミン監督)など。

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